はじめに
今回は「公園シリーズ」をお届けします。
私の住まいの近くには、二つに分かれた大きな池のある公園があります。先日、久しぶりに奥の木道を散歩してみました。
刻々と形を変える水面の波紋、それを優しく覆い隠すように茂る木の葉、そして葉の隙間から覗く対岸の深い森……。その何気ない遠景が、その日は妙に心地よく、私の心に響きました。
この光景を前にして思い出したのが、印象派の巨匠、クロード・モネとピエール=オーギュスト・ルノワールの二人が並んで描いた名作「ラ・グルニエール」です。今回は、彼らが「筆触分割」という新しい技法に挑んだときのような、描き手としての純粋な喜びを大切にしたい。あまり難しく考えず、私が絵に興味を持ち始めた頃の原点に立ち返り、キャンバスに向かう時間を心から楽しんで描いてみました。

Inkscapeで描く「葉と光の重なり」
今回は「GIMP 2.10」と「Inkscape 1.0」のどちらで描くか迷いましたが、葉の質感を出すには、Inkscapeの「カリグラフィツール」にキャップをつけたようなタッチが最適だと判断しました。
まず、新規画面をA4横サイズで作成します。
背景となるレイヤーを「グレー」と名付け、矩形ツールで画面全体を50%のグレーで塗りつぶします。その上に「下絵」レイヤーを作成。カリグラフィツールの幅を3〜5に設定し、薄いベージュで全体の構図を描き込んでいきます。

画面全体を覆う前景の葉、揺れる水面のさざ波、中景の対岸、そして遠景の森と空。これら大まかな要素を線描で捉えます。今回も「ぼかし」や「透明度」といったデジタル特有の機能はあえて封印し、純粋な「タッチの積み重ね」で表現することにこだわりました。
大胆なタッチで水面を捉える
アタリができたら、グレーのレイヤーのすぐ上に「グレーの水面」レイヤーを作成します。「下絵」レイヤーは常に最前面に配置し、各パーツを描く際のガイドとして活用します。
水面は、カリグラフィツールの幅を「60」と大胆に広げ、水色に近いグレー(R:214, G:216, B:228)で素早く塗っていきます。細部にこだわらず、大きなストロークで描くことで、絵に勢いと時間の流れが生まれます。最終的にA4サイズで切り出すため、画面からはみ出すくらい大らかに筆を動かしました。

続いて、対岸の木々の映り込みや、手前の葉が落とす影を描き込みます。ここでも筆を小さくしすぎず、リズムを大切に「サーッ」と筆を走らせるのがコツです。
中景から遠景へ、色彩のハーモニー
次に、新規レイヤー「遠景の森」を作成し、対岸の林を描きます。全体の色彩の調和を意識しながら、中景としてふさわしい落ち着いた緑を選びます。

続いて「空」レイヤーです。曇り空をイメージし、グレーや水色を重ねます。幅20〜30のタッチで、右上から左下へと、ある種「乱暴」とも言えるような自由な筆致で描きました。巨匠たちがそうしたように、計算された美しさよりも、その場の空気感を写し取るような感覚です。

仕上げ:生命を吹き込む「枝と葉」
いよいよクライマックス、画面に奥行きを与える「枝と葉っぱ」です。
まず目立つ枝だけをミニマルに描き、その後、葉を重ねていきます。葉はあえて「暗い色」と「明るい色」の2色に絞りました。

先に面積の多い「暗い葉」を中・小のタッチで散らし、その上に「明るい葉」を光の粒のように置いていきます。枝の方向に沿ってタッチを揃えつつ、あえて「密」な部分と「疎(まばら)」な部分を作ることで、空や遠景が透けて見えるように調整します。この「隙間」こそが、画面に風を通してくれるのです。

最後に「水面のきらめき」レイヤーを作成。手前の影の部分に、カリグラフィツールの幅を調整しながら、水面の色を拾ってきらめきを乗せれば完成です。
おわりに

いかがでしょうか?
巨匠たちのように完璧な水面の表現には届きませんが、今の私にしか描けない、瑞々しい日常のひとコマが仕上がったと感じています。
あえて省略を多用したことで、どこかイラストレーションのような軽やかなテイストが生まれました。何よりも、かつて絵を描き始めた頃のようなワクワクした気持ちで筆を動かせたことが、私にとって最大の収穫でした。
皆様の目には、この水面の揺らぎはどう映りましたでしょうか。
ご質問やご感想など、お気軽にコメントいただければ嬉しいです。
それでは、次回の記事でまたお会いしましょう。

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