公園シリーズ──GIMP2.10で描く池のある公園

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今回は公園シリーズの3作目です。前回、煙突のある大きな公園をリアルなスタイルで描きましたが、アートとは「ビルド・アンド・クラッシュクラッシュ・アンド・ビルド」と言われるもの。常に同じ表現に留まっていては面白くありません。今まで築き上げてきたものを破壊し、新しい表現の自由な旅に出かけましょう。

今回選んだモチーフは、前回とはまた違う、自転車で10分ほどの距離にある、駅近くの池のある公園です。

絵のスタイルは、私の過去の記事『Inkscape 1.0で風景画を描く』に似たものになりました。しかし今回は、写実性を手放し、大胆な色使いを試みます。

夕焼けのピンクに染まった空、池、そして木の幹の様を、リアルな色彩ではなく、意図的に鮮烈な色を選び、色価(バルール)を際立たせた絵に挑戦します。例えば、アンリ・マティスヴァン・ドンゲンのようなフォービスム(野獣派)の画家たちが示したような、感情を解放した色彩表現を目指します。

また、しばらくInkscapeでの描画が続いたため、操作を忘れないという意味もあり、今回はGIMP 2.10で描いていきます。

早速、GIMP 2.10を起動し、メニューから「新しい画像」を選んでA4横サイズに設定します。

画面全体をグレー(C10, M0, Y0, K50)で塗りつぶします。GIMP 2.10はCMYKモードを擬似的に表現していますが、慣れているため、ここではこの擬似CMYKモードで色を塗ることにします。

グレーのレイヤーの上に「下絵」レイヤーを作成し、これから描く絵のアタリをブラシツールで描きます。今回はぼかしを一切使わず、タッチを残すスタイルで進めます。レイヤーの不透明度、ブラシの不透明度は全て100%。色は明るいベージュで、ブラシサイズは10程度で描いていきます。新しいレイヤーを作る際には、必ずこの「下絵」レイヤーをそのすぐ上に配置し、色を塗る基準とします。

グレーのレイヤーの上に「地面」レイヤーを作成し、池の横の散歩道を描きます。土と石畳をそれぞれ塗り分け、立木の隙間から漏れる夕日の木漏れ日を表現します。ここで早速、大胆な色を使います。影の部分をピンクエンジ色で表現し、夕焼けの光を強烈に感じさせます。少し突飛に思えるような色を選ぶことが、今回のポイントです。コンクリート製の擬似手すりの下の部分は、さらに暗い色で表現しておきましょう。地面が大体できたら、次に空を描きます。

下絵のアタリに従って、大まかに青空や白い雲を描いていきます。最初はブラシツールのサイズを大きくし、大胆なタッチで、空や雲の境界線は気にせず、色で埋めていきます。また、下絵に合わせて、右側の立木の隙間から覗く青空の部分に水色を置きます。ここで、近景となる左上の垂れた葉っぱたちを描き、その隙間から青空が見えているような表現を加えます。さらに、池の手前で青空が水面に映っている部分も、大まかなタッチで色を置いておきます。

空と左上の近景の葉っぱたちが大体できたら、画面全体の葉っぱを描いていきます。まずは右側の立木の、暗い部分を大きなタッチで下絵のアタリに従って描きます。また、池の対岸の緑の暗い部分を、ブラシのサイズを小さくして描きます。

葉っぱの暗い部分が描けたら、緑の中間色を、アタリを頼りにブラシのサイズを調整しながら、上に乗せるように描いていき、葉っぱがこんもり重なった様を表現して調子を出します。色を少しずつ変えながら、遠景の緑が池に映る様子も描いていきましょう。全体が徐々に絵として形になっていくのが感じられます。

さらに緑の明るい部分を描き足していきます。ブラシサイズをさらに小さくし、遠景の緑は色を少しずつ変化させて描きます。柳の木は、ブラシのタッチを縦に入れることで、枝が垂れた感じを表現します。中央から右にかけての丸っこい葉っぱは、タッチをクルクルと丸めるように描き、立体的に見えるよう、暗い部分、中間部分、明るい部分の色価に注意を払います。これでかなり仕上がってきました。

緑の葉っぱたちが大体できたら、池と道の境目にある手すりをアタリに従って描きます。地面で使った光と影の色をここでも使用し、夕焼けに染まった手すりの質感を出します。

手すりが描けたら、手前の木の幹や向こう岸の立木の幹を描きます。ここで、大胆な色価(バルール)を表現するため、夕日の光が当たっている部分に、地面で使った暖色系の色を塗り込みます。道だけでなく木の幹にもこの色が加わることで、全体的な寒色と暖色のバランスが良くなってきました。全体に色が配置されてきたので、ここで「下絵」レイヤーの目のアイコンをクリックして非表示にし、全体を見てみます。大分完成に近づいてきました。

空の描きこみが足りないので、夕焼けに染まった感じを細かいタッチで加えます。描きやすいこともあり、セザンヌ風に右上から左下のタッチで雲や空の様子を描きます。ピンクに染まっている遠景のビルも、ここで描き入れていきます。

池の水面に映った夕焼けのピンクの雲も忘れずに描きます。あとは、右側の葉っぱたちのディテールを、小さなタッチで明るい部分と暗い部分を、それぞれほんの少し色を変えて点描のように表現していきます。

これでほぼ完成ですが、右の木の幹にもっと大胆な色が欲しいと感じました。さらに強いピンクで強調したらどうなるか、新たに調整レイヤーを作って試してみます。

少しきつく、破綻している感じもしますが、これも「クラッシュ・アンド・ビルド」の精神。これで完成とします。お疲れ様でした。

今回の作品はいかがでしたでしょうか?

自分ではかなり大胆な決意で臨んだつもりでしたが、地面や木の幹に夕日が当たっている感じは表現できているとは思うものの、それ以外の緑の葉っぱたちが、まだ常識的な表現に留まっているように感じています。

おそらく、この公園の現実の景色に囚われているからでしょう。もっと想像力を発揮し、現実とは離れた自由な表現をしたいと強く思いました。

では、また次回の記事でお会いしましょう。感想や質問があれば、今後の励みになりますのでコメントを残していただけると幸いです。

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